ポピュラー音楽への想い
たしかあれは、私が中学生の頃だったと思う。当時アメリカのビルボード誌の上位にランクされていた 人気歌手の歌を夢中で聴いていたのは。「ダイアナ」 や最近では「マイウェイ」で有名なポール・アンカ、「恋の片道切符」などのヒット曲がある、ニール・セダ カである。彼らの新譜がでると、我先にとレコード 店に、ドーナツ盤のレコードを買いに行った。ポール・ アンカの少しかすれたセクシーな声と、高音で透明な美声のニール・セダカの歌に合わせて、一人悦に 入り歌っていたものだった。未だにこれらの歌は暗譜している。
やがてクラリネットを専攻し、音大に入学したにもかかわらず、今度はアメリカンフォークソングにのめり込み、ブラザースフォア、PPM、キ ングストントリオなどのグループに憧れ、ギターを買い求め必死に練習をして、高校時代の友達 4 人とグループを組み、いろいろな所で歌っていた。その当時は今のように楽譜が出版されていなかったので、ギターコードと歌はレコードからのコピーだった。
大学を卒業し演奏活動をしていた時もクラシック音楽だけにとどまらず、クラリネットとアルトサックス を両手に、ジャズ、ラテン、ポップスと頼まれれば、 どこへでも演奏しに行った。これらの体験は、私の音楽人生の中で非常にプラスになっている。
今までに平混のコンサートには、合唱の基本である宗教音楽を始め、著名なヨーロッパの作曲家の作品や邦人作品のみならず、ポップス、映画音楽、 歌謡曲に至るまで、幅広いジャンルを歌ってきた。 最近とりわけポピュラー音楽に力を入れている。それは松田聖子が歌った「瑠璃色の地球」を平混は よくアンコール曲に歌っているが、地球平和を歌ったスケールの大きな内容の歌で、合唱で歌うとその広がりが一層深く表現され、お客様に大変喜んで頂いている。
このように日本のポップスを合唱で歌うことにより、ソロでは味わえない人の声の重なりにより、色彩感も増し聴き手に一層の感動をメッ セージできると思った。またこれらの作品には、人生のあらゆる出来事それに伴う感情がストレートに 描かれていて我々にも素直に共感できる。そして日本の良き時代を彷彿させる日本人の心もうたわれている。
5枚目のアルバム「時代」はそんな日本のポップス、 歌謡曲の中で、長年歌い継がれてきた、また歌い継がれるであろう名曲をセレクトした。このCDは平混としても、おそらく日本のその他の合唱CDでも類をみない初めてのこころみであり、私のボピュラー音楽に対する熱い気持ちを一枚のアルバムにしたいという思いからであった。しかし、それはかなりの冒険でもあった。なぜなら、それらの作品には、その歌手の個性、メッセージ、想い(フィーリング)が込められていて、一つの世界が構成されているからである。それぞれの歌手の歌(個性)から一度離れて、その作品の詩とメロディーとに真っ直ぐに向かい合い、平混なりにメッセージできたらと思う。