合唱とメッセージ 〜魂の響き〜
表現するということは、どういうことなのだろう。
演奏する人は、その作品に共感し、その上創造性を膨らませて、自分の思い、気持ちを演奏を通して、聴き手に伝える。その気持ちがメッセージとして伝わったとき、初めて表現は成立するのである。つまり表現力とはその演奏者の感性、創造性、人間性などが総合され、聴き手に伝えるパワーを意味する。
歌には言葉があるわけだから、器楽に比べてス トレートに人の心に入り、より大きな感動を与えることができる。したがって当然正しく、明確な発語が要求される。声はよいのだが、言葉が聞き取れない、独唱や合唱に出会うことがあるが、これでは表現は半減してしまう。日本人は欧米の人達に比べて 感情の表現が苦手である。これは国民性からくるものである。自分の気持ちをストレートに表さず、なるべくポーカーフェイスでいることが美徳とされていたからだろう。つまり我慢の美学である。
音楽上の表現においても、技術的には優れてい るが内容が希薄な演奏や、作品を見ても技巧的な面が強調されていて、内面から湧き出てくるものがないといった傾向が見られ る。これは日本の合唱界では顕著である。それだけ表現するとい うことは、難しいのであろう。音楽はその人の人間性そのものであり、表現は常にその上に立つものだから。
演奏者と聴き手がその作品を通して、心で語れる音楽を創っていきたい。